#18「自己相似のアンドロギュノス」
β世界線に移動するために岡部が次に取りかかったのは、るかがまだお腹にいるころの母親へ送ったDメールを取り消すことだった。るかの母親のポケベル番号を聞き出すために「Dメールを送る前のオマエは男だった……」と事実を説明する岡部だが、その話は以前の世界線での記憶がないるかを傷つけるだけだった。事の顛末を聞いたまゆりや紅莉栖から責められ、すっかり弱り果てた岡部の元にるかからメールが届く。“彼女”に会いに行った岡部は、るかから「男に戻る代わりに明日一日だけ恋人になってください」と告白されたのだ。デート経験が一度もない岡部は紅莉栖に相談するものの、具体的なプランがまとまらないまま翌朝を迎えることに。紅莉栖が用意したプランを元にマニュアル的なデートをするものの、るかとのやりとりは終始ぎこちないまま。そして、デートの途中、るかは岡部との出会いを振り返るが、それは以前の世界線でのものだった。デートが終わり、ラボに戻ってきた岡部だったが、マニュアルデートをしていた自分は本当の自分じゃないと気付き、柳林神社へ急ぐ。そして、るかは鳳凰院凶真の弟子というあるべき関係に戻り、修行を行う。「本当は男に戻りたくない」と心境を吐露するるかは、まゆりを救うために母親のポケベル番号を岡部へと手渡す。「覚えておいてください、女の子だった僕のことを」──こうしてるかのDメールは取り消され、世界線は変動した。残るDメールは、あとひとつ。
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【用語1】 フラグ
小説や映画、マンガなどの物語における特定の展開に導くための事象を指す用語。奥義や必殺技を先に出すと敗北する「負けフラグ」、危険な任務のあとに引退や結婚の予定がある「死亡フラグ」、死んだはずなのに死体がない「生存フラグ」など、さまざまなフラグと類例がある。「恋愛フラグ」は、主人公が食パンをくわえて走る少女とぶつかるといった、ハプニングを伴った出会いが典型的なパターン。元々はコンピュータ用語で、条件判定の結果を格納する場所を指す。
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【用語2】 オペレーション・ヴァルキュリア
岡部とるかのデートを成功させるべく、紅莉栖とダルがふたりのあとをつけてアドバイスをする作戦で、紅莉栖が立案した。岡部がるかに母親のポケベル番号を聞き出し、るかの性別を変えたDメールを取り消すことが最終目的。ヴァルキュリアとは北欧神話に登場する神と人間のハーフで、戦死者の魂を天上にあるヴァルハラへ招き入れるのが任務とされている。
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【用語3】 デートマニュアル
るかとのデートについて岡部から相談を受けた紅莉栖は、アドバイスのためにデートマニュアル本を用意した。しかし、紅莉栖自身にも恋愛経験はほとんどなく、デートマニュアル本を音読するだけで大したアドバイスはできずに終わった。
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【用語4】 2929831831……
るかのDメールを取り消すため、妊娠中のるかの母親に送った2通目のDメールの文面。るかが以前に送った「やさいくうとげんきなこをうめる」というDメールを、いたずらだと思わせるために作成した文面。「にくにくやさいやさい…」と読むことができる。