#20「怨嗟断絶のアポトーシス」
萌郁からIBN5100の隠し場所を聞き出した岡部。しかし、紅莉栖によると、岡部がこの世界線でIBN5100を手に入れることは不可能であり、まずはラウンダーの指揮官である「FB」なる人物に接触すべきだと言う。岡部はIBN5100が隠されたコインロッカーを見張り、そこに現れた萌郁とともに運び屋が持ち出したIBN5100の後を追った。そして、追跡の途中で岡部はよく知る人物の姿を目撃する。それは「Mr.ブラウン」こと天王寺裕吾であった。IBN5100が彼の自宅を経由してSERNのあるフランス行きの飛行機に積み込まれた事実を見届けた岡部は、真相を知るために天王寺の自宅を訪ねる。岡部たちに「FB」の正体を問いただされた天王寺はこう言った――「裏切ったようだな、M4」と。「M4」とは「FB」が萌郁につけたコードネームで、ふたりだけが知る呼び名である。萌郁に送られてきたメールの文面は女性の口調であったが、天王寺こそが「FB」だったのだ。岡部たちを連れて外へ移動した天王寺は、自らがラウンダーとして働くことになった経緯を語り、取り出した拳銃で萌郁を撃つ。そして、自らのこめかみに銃口を当て、引き金を引いた。岡部が天王寺の携帯電話からDメールを送ると、リーディング・シュタイナーが発動。ようやくラボにIBN5100が存在する世界線に移動することができた。これでSERNのデータベースに記録された最初のDメールを削除すれば、まゆりが死なず、ディストピアのない未来が待つβ世界線に戻れる。だが、そのとき岡部は最初に送ったDメールの内容を思い出した。1通目のDメール、それは岡部が紅莉栖の死体を目撃したことをダルに伝えるものだった。β世界線に戻れば、牧瀬紅莉栖が死ぬ。
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【用語1】 M4
ラウンダーにおける萌郁のコードネーム。この名を知る者は名付け親の「FB」と萌郁しかいない。天王寺は、無差別にダイレクトメールを送り、返信してきた者をラウンダーとして集めていた。扱いやすく、用が済めば始末しやすいと考えていた。このメールによって萌郁は自殺を思いとどまり、ラウンダーの一員となった。なお、「FB」は親身になって彼女を励まし続け、萌郁にとって唯一心を許せる母親のような存在になっていた。
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【用語2】 FB
萌郁にメールで指示を出すラウンダーの指揮官で、その正体はブラウン管工房店主の天王寺裕吾。ブラウン管を発明したノーベル物理学者、フェルディナント・ブラウンのイニシャルを自らのコードネームにしている。天王寺は孤児であり、幼少の頃に貧困のさなかでSERNの元で生きる道を選んだが、任務に失敗した者は消される運命にある。そのために、彼はまだ何も知らない娘の綯を救うために自らの命を絶った。
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【用語3】 最初のDメール
7月28日の岡部がダルに送った、紅莉栖が刺されたことを伝えたメール。このメールが偶然Dメールの発生条件を満たしており過去に送られ、それがSERNに捕捉されたことにより、アトラクタフィールドが分岐した。IBN5100の機能を使い、SERNのデータベースにあるこのDメールのデータを消去すればα世界線からβ世界線に移動し、その結果まゆりを救うことができる。
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【用語4】 β世界線
岡部たちが一番最初にいた世界線。β世界線では、まゆりの死は確定しておらず、鈴羽の悲願であるディストピアのない未来が訪れる。しかし、7月28日に紅莉栖はラジ館で命を落としている。
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【用語5】 データベース
SERNはIBN5100の特殊言語でデータベースを構築しており、外部からのハッキングを防止するため全世界にあるIBN5100を捜し求めている。ラウンダーはIBN5100の捜索と回収のために、SERNが非公式に結成した下部組織である。