#22「存在了解のメルト」
紅莉栖を捜していた岡部はラジ館の屋上で彼女の姿を見つける。降り出した激しい雨から館内へ逃れたふたり。そこで紅莉栖は、別の世界線での出来事――β世界線で自分が刺殺されたこと、α世界線でまゆりを救うために岡部がタイムリープを繰り返してきたこと――の記憶があると告げる。そして、紅莉栖は岡部にβ世界線に行き、まゆりを助けるようにと岡部に言う。選択を拒否した岡部はラボでタイムリープマシンを起動しようとするが、追いかけてきた紅莉栖に止められる。これ以上、タイムリープをくり返しても「1%の壁」は超えられず、まゆりの死を繰り返し目にすることで、いつか岡部の精神は壊れてしまう……紅莉栖はそう彼に諭したのだった。そして、岡部はついに決断を下す。「俺は、お前を助けられない」と。避けられない別れを前にして岡部は紅莉栖への想いを告白する。翌朝、アメリカへ帰る紅莉栖を見送ったあと、ラボに戻った岡部は、最初のDメールの消去を決行。世界が再構築される中、突然ラボのドアが開く。そこにいたのは、帰国したはずの紅莉栖だった。「私も岡部のことが……」――そう言いかけた彼女の姿は、アトラクタフィールドの移動とともに幻のように消えていった。さまざまな想いを犠牲にしてたどり着いたβ世界線。岡部は厨二病的な勝利宣言を行い、「電話レンジ(仮)」とIBN5100を処分する。すべては終わったかに見えたが、ダルの携帯電話に着信があり、電話の相手は阿万音鈴羽を名乗る。そして、岡部に今すぐラジ館の屋上に来てほしいと言う――「お願い、あたしの言うことを信じて! 第3次世界大戦を防ぐために」。
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【用語1】 ソーイングセット
紅莉栖が持っていた携帯用の裁縫道具。ラジ館の屋上で急な雨に降られて館内に避難した際、岡部の白衣の左肩が破れていることに気づいた紅莉栖はソーイングセットを取り出して繕った。糸は、黒、赤、ピンクの3色しかなく、館内が暗かったせいでどの色になるかは不明だったが、結果はピンクだった。
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【用語2】 1%の壁
アトラクタフィールドが分岐する、ダイバージェンス1%の境界のこと。1%未満のα世界線ではまゆりが死に、1%の壁を越えたβ世界線ではまゆりが死なない代わりに紅莉栖が死ぬことになる。
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【用語3】 相対性理論
アインシュタインが提唱した理論。物体は光速以上の速さで動くことはできず、光速に近づくほど時間の流れが遅くなることを示した。岡部と過ごす最後の時間があっという間に過ぎていくように感じた紅莉栖は、その状況を科学者らしく、観測者によって時間の流れが変化する相対性理論になぞらえた。
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【用語4】 現在を司る女神作戦(オペレーション・ベルダンディ)
もともとは紅莉栖が提唱したタイムリープ理論を実現するという内容の実験だったが、最終フェイズでは、IBN5100でSERNにクラッキングを行い、データベースにある最初のDメールのデータを消去する事が目的である。この作戦が成功すればα世界線からβ世界線に移動し、まゆりが死なない世界が訪れる。ベルダンディとは北欧神話に登場する三姉妹の女神の長女で、現在を司るとされている。