#23「境界面上のシュタインズゲート」
ラジ館の屋上に現れた鈴羽によると、この世界線の未来では、第3次世界大戦が勃発し、多くの人々が犠牲になるという。それを回避するためには、2010年7月28日に死んだ牧瀬紅莉栖の命を救い、アトラクタフィールドの干渉を受けない唯一の世界線“シュタインズゲート”を目指さなければならない。岡部は鈴羽に協力することを決め、タイムマシンで2010年7月28日のラジ館へ跳んだ。紅莉栖の死体を発見した場所で身を潜めて待つ岡部。そこへ現れた紅莉栖は遅れてやってきた人物にタイムマシンの論文を手渡して言った――「あのね、これを読んでほしいの、パパ」。紅莉栖の父親とは、中鉢博士だったのだ。しかし、論文を読み終えた中鉢は、紅莉栖の優秀さに嫉妬し、錯乱状態で彼女の首を締めあげる。紅莉栖を助けようと飛び出した岡部だったが、もみ合いの末に中鉢のナイフで紅莉栖を刺し殺してしまった。岡部は元の時間に帰ってくるが、茫然自失のまま、立ち直ることが出来ないでいた。その時、岡部のケータイにメールが届く。その指示に従い、ニュース映像を見ると、そこにはロシアに亡命した中鉢の姿が映し出されていた。ニュースは中鉢が乗っていた飛行機の火災事故を報じており、中鉢はまゆりのメタルうーぱを掲げ、「これが金属探知機に引っかかったおかげで、論文が焼けずにすんだのだ」とコメントした。その論文は紅莉栖のものであり、第3次世界大戦勃発の元凶であったのだ。鈴羽に促されて7月28日に届いたムービーメールを見ると、そこには未来の岡部自身がいた。彼は「中鉢博士がロシアに持ち込んだタイムマシンに関する論文をこの世から葬り去ること」と「牧瀬紅莉栖を救うこと」がシュタインズゲートに到達するための条件であると告げる。紅莉栖が死んだという過去を変えずに、彼女を救うためには、「生きている紅莉栖を過去の自分に死んだと観測させる」のだと。岡部はその意味をすぐに理解し、鳳凰院凶真として復活を遂げる――「世界は、この俺の手の中にある!」
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【用語1】 第3次世界大戦
大国間のタイムマシン開発競争が激化した結果、2015年に勃発した世界大戦。2036年には57億人の命が奪われており、世界人口は10億人程度にまで減少している。α世界線の未来におけるSERNによって築かれたディストピアと同様に、β世界線では必ず第3次世界大戦に収束する。
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【用語2】 シュタインズゲート
アトラクタフィールドαとβの狭間にある、他の世界線の干渉を受けない唯一の世界線。すべてが確定していない未知なる世界である。β世界線の未来の岡部がその存在と到達するための条件を突き止め、鈴羽を2010年に送り込む作戦を立てた。「シュタインズゲート」という名前には、特に意味はない。
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【用語3】 深刻なタイムパラドックス
タイムトラベルで発生する矛盾のこと。岡部はこれまでに記憶を過去に転送するタイムリープを幾度となくやってきたが、鈴羽のタイムマシンで行うのは物理的なタイムトラベルである。そのため、跳躍後の7月28日には過去の岡部と未来から来た岡部が同時に存在。ふたりが会ってしまった場合、何らかの問題が発生する可能性がある。
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【用語4】 中鉢博士
青森に在住する紅莉栖の父親で、本名は牧瀬章一。タイムトラベルの研究をしているが、現在は学会から追放されており、そのことを屈辱に感じている。自分よりも優秀な娘の紅莉栖に嫉妬して長年距離を置いていたが、2000年のアメリカに現れたジョン・タイターの理論を模倣したタイムマシン理論を完成させ、7年ぶりに紅莉栖に連絡を入れた。β世界線では、紅莉栖の論文を盗用し、自らの論文として発表する。その結果、大国間でタイムマシンの開発競争が起こり、第3次世界大戦を引き起こす。
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【用語5】 ムービーメール
7月28日の岡部が受け取った、謎のメールに添付されていたノイズだけの動画ファイル。これを送ったのは2025年の岡部である。その時点の彼は、「3週間の世界線漂流の末にβ世界線に戻り、鈴羽のタイムマシンで過去へ行き自らの手で紅莉栖を殺す」ことを体験している。その後、紅莉栖を救うために人生を捧げてタイムマシン研究を行っている。ムービーには、シュタインズゲートに到達するための条件を説明する、厨二病全開の33歳の岡部の姿が収められている。
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【用語6】 C204型
β世界線において岡部とダルが制作し、鈴羽が搭乗してきたタイムマシンの型式。α世界線のFG204型では不可能だった未来へも跳躍できるタイムマシンとなっている。ちなみに「C」とは「クリスティーナ」の頭文字の「C」である。
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【用語7】 未来を司る女神作戦(オペレーション・スクルド)
33歳になっても厨二病が抜けきらない、2025年の岡部が立案・命名した作戦。この作戦の要は、7月28日の岡部が血だまりに倒れる紅莉栖を観測した事実を変えなければ、「紅莉栖の生死は関係ない」ことである。スクルドとは北欧神話に登場する、未来を司る運命の女神の三姉妹のひとり。